紙とくまの生活。
忘れるために書く日記。


秋は落ちてる。そして踏まれがち。地面には汚れてぐしゃぐしゃの秋が這いつくばっている。夏は空の高さを感じたが(おもに雲などで)、秋の空は広がりを感じさせる。どこまでも畝が耕されている。夜は虫の声が足元から湧き上がっている。縦方向の深さ。

今年は蝉しぐれに出合えなかった気がする。姿は見えない。しかし空間すべてががらがらの振動で満たされているあの状態を蝉しぐれと呼んだ人! 表彰状あげます。

妙に汗ばむ日もあるかと思えば夜は冷えることも多く、ジョギング中に近所のわりと大きめな公園の祭りに出くわす。道の脇には屋台が並び、人工的とノスタルジー半分の光量を空気にとかしていた。信じられないくらい人々がいて、「市民たち……」とつぶやく。芝生にシートを敷いてなにかを食べていたり、子どもが鉄の枠組みによじ登ったりして、それが闇の中、たそがれを延命している光によって薄ぼんやりした人格を映し、みなさまはおつれさまのことおわかりでしょうが、わたしにとってはたにんだし、ことによってはおなじじかんに生きているひとかもあやしくおもえます。おもえました。太鼓の音、してただろうか。露店の先には紅白に照らされた櫓が組んであって、なにかやってた気もするのだけど、ちょっとおぼえてないですね。わたしけおされてましたね。