知らないホコリ

 

引っ越してよりだから二年以上、洗面台の隅に洗濯機の屑とりの網が置いてあって、洗濯機はヒナ氏が持ってきたものだから、これはヒナ氏のものである。洗濯機には本来の屑とりのアタッチメントがついていて、だから追加で屑とりを使うこだわりのある人なのかと思っていた。洗濯機は浴室と洗面台の中間にあり、網には1/5ほど取れたホコリが入っている。

それにしたってずーっと置いたままで、洗面所の掃除をするたびに持ち上げたりしてたけど、なんなんだろと思って訊いてみた。

ら、

（しかしまあ、こーんな顔するかね）

この洗濯機はそもそもヒナ氏が親戚からもらったもので、ヒナ氏のもとに届いたときコレはすでに洗濯機の中に入っていたとのことであった。ヒナ氏は「これ何かなー」と思いながら使わないまましかし引っ越しのたびには大事に持ち運ぶ、ということをしていたらしい。洗濯機の屑とりって教えてあげたら驚いていた。

（こっちのセリフじゃー！！！！！）

★

しかし待てよ、と考える。

ということは入っている屑は知らない人（ヒナ氏にとっては血がつながっているが）の衣類のホコリであり、その知らないホコリの前で化粧をし、眉毛を抜き、鼻毛を切り、服を脱ぎ、ってとんでもなく恥ずかしいことではないだろうか。やめてくれ見ないでくれ知らない人！！！

ということで二年越しでわが洗面所（兼脱衣所）を見守っていた守護神は静かに捨てられたのでした。ありがとう知らないホコリ、さようなら知らないホコリ。僕らキミのこと忘れない……！！