紙とくまの生活。
忘れるために書く日記。


20140525 『あなただけ今晩は』

昨晩、DVDで映画を観たのだけど、眠くなって途中で止めてしまった。今朝はびっくりするほどゆっくり起きて、神様(同居人)が出かけてから続きを観た。それからうだうだしてしまって、夕方までぼんやりしていた。

ビリー・ワイルダーのラブコメジャック・レモンシャーリー・マクレーン。 

話はこんな。筋とかけっこう書いちゃうのでネタバレとか気になる人は気を付けてね。でも多分、筋がわかってても楽しめちゃう感じの映画だと思う。

舞台はパリ。生真面目な警官のネスター(ジャック・レモン)と娼婦のイルマ(シャーリー・マクレーン)が出会って、恋に落ちる。

売春は違法なんだけど、娼婦たちのいる裏街界隈と警察はなあなあになっていて、決まった曜日に形だけの手入れが入って、少しの罰金で釈放される。警官はわいろをもらう。

新しく赴任したばかりのネスターはそんなことを知らずに律儀に仕事をし、娼婦たちを検挙、しかし上長の不興を飼って警官を首になっちゃう。

裏街のバーに戻って、イルマと再会、イルマのヒモの伊達男を殴ったらイルマもネスターにめろめろになって、ネスターが新しい恋人になる。これが最初の一日に起きたこと。

 娼婦たちにはヒモがいて、彼らは売り上げを貢がせて、自分たちは酒を飲んだりビリヤードをやったりしている。無理やりさせられているっていうだけではなくて、イルマは自分が稼いで、それで恋人を格好良くしてあげたいという。好きな人には貢ぎたい。ネスターはイルマの恋人になったわけだけど、彼女を好きだからこそ売春をやめてほしいと言う。でもお金はない。イルマは働くわと言う。

そこで考えたのは変装をすること。お金持ちの英国紳士になりすまし、イルマの客になる。破格の500フランを支払い、自分は不能だと言って、カードゲームをするだけ。週に2回。それだけあればイルマはほかの客をとらないで済む。お金は紳士(X卿)がイルマに支払い、イルマがネスターに渡す。ネスター=X卿なので、1フランも変わらずにまわっていく仕組み。……そんなにうまくはいかないんだけど。

 

ここまでお膳立てができたところでやっと面白くなってきた。どうしようもない状況、人物たちのキャラクター(それこそ「業」とも思えるくらいの)、まだるっこしい心理描写などはありません。迷宮とみせかけて行ける方向はひとつだけ、みたいな感じ。でもそれが面白いし、無茶だと思ってもすんなり飲み込めてしまったりする。

 

500フランが回り続けて、ふたりは悠々と暮らす予定がうまくいくわけもなく。出費も重なり、ネスターはイルマが眠っている間に窓から忍び出て市場で肉体労働をして、明け方に戻ってくるというバイト生活。イルマが起きるころにはつかれて爆睡してしまう。時間はあるはずなのにかまってくれない恋人。ある朝、ネスターが帰ってくるところを見つけてしまう。理由をきいても教えてくれないし逆切れされる始末だし。涙にくれるイルマはX卿の許へ……。

 

この喧嘩におかしな状況とかふたりの気持ちが詰まってる。どちらの葛藤もこっちは合点がいく。あと、X卿殺害容疑でネスターが捕まる場面も面白い。全部知っているのはネスターとバーの主人と観客(視聴者)のみ。説明しても理解されないであろう荒唐無稽な話だもんな。イルマの気持ちは完全にX卿にいってたのだけど、ネスターの「愛してるから殺した」(ということにした)っていう話にまためろめろになるっていう。トンデモ。イルマへの愛ゆえにX卿(の存在)を殺したっていうのはまあそうなので。そこからラストまではコメディだなって感じもするし、大事な蛇足だとも思うし。ワイルダーの手腕なんだと思う。

 

楽しいジキル博士とハイド氏だった。ちょっと違うのかな。

思ったのは、わたし(達)はいろんな情報を知りすぎて、振り回されてるんじゃないかなということ。イルマは言ったら「ビッチ」だし軽い「メンヘラ」なんじゃないかと思うし。浮気したりされたり、寝取ったり寝取られたり、みたいな話はインターネットをちょっとつつけばたくさん出てくる。それに対する回答はだいたい統一されていて、貞操観念がゆるい奴とは付き合うなとか、浮気する奴は何度でもやるとか、制裁をくわえて当然だとか。なんか。そんな。こういう意見はいくらかの真実は含んでいるかもしれないし、それで救われる人もいるのだろうし、ある程度の倫理観が共有されているというのもとても大事だし。ここで、愛とは奔放とかセックスワークの重要性とかそんなことが言いたいわけではないのだけど、こういう緩さを楽しむのはいいことなんじゃないかなと思ったわけなのです。うーんなんか。実際身近であったらきついんだろうけど。先述したような価値観でしかものをみられないとしたら、その方がきついというか。これはフィクションだからね。コメディだしね。みたいな。

うまくいえないけど。この「業」っぽさがわたしはとにかく好きなのだってことかもしれない。歌舞伎とかもみてるとやばいもの。

なんだか墓穴を掘り続けているようなエントリ。どうしたらいいのだろ。

お昼を食べはぐれたので、起き上がるたびに立ちくらみ。危なすぎる。

夕食は昨日のからあげと野菜に火を入れて甘辛ソースかけ。春雨サラダ。ひじきは変わらず。

帰宅した神様にあらすじを説明しようとしたら、断られたので。

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ちぇっ。