紙とくまの生活。
忘れるために書く日記。


縁側

身体がいたいの、疲れなのか気圧なのか月のものの前兆なのかわからない。全部なのかもしれない。飲酒までしたら原因の特定はさらに困難だ。特定、必要? 月の半分は好調じゃないと思ってすごしている。以前は身体なぞ意識されないほどに軽かったのに。なんだか教訓譚めいている。

 

最初に住んでいた家のことを考えている。木造平屋、家賃は3千円だったと思ったが、安すぎるので3万円かもしれない。間取りでいえば4DK? このDは土間のD。ひとつの部屋は通り過ぎられるだけの実質廊下で、通り道以外は本か雑誌か新聞が積まれていた。トイレと風呂は玄関の外で靴を履いていかなければいけない。家の前に車を停める、がんばれば二台目も停められる。ただし坂道だけど。庭は広く井戸付き、蜘蛛の巣がはっている。紐をつけたバケツで水をくめたが、落ちるのが怖かった。庭の隅には柿の木が植わっていて、これは渋柿。夏になると隣でヒマワリを育てた。豪勢に蔵もついていたがこれはさすがに大家の持ち物で、たまに扉があいていて中を覗けた。蔵の前に少女漫画雑誌が束ねておいてあることもあった。春になる少し前にツクシが顔を出し、緑色の胞子をふるって遊んだ。たくさんとって帰れば、おひたしになって出てきたが、そこまでして食べるものなのかはわからない。家の裏には小さな水路が流れていて、少し高い地面にまた柿の木が並んでいた。どれもこれも渋柿で、一本だけ甘いのがあった気がするが定かではない。隣には大家の家があって、ちゃんとした二階建てで壁は白かった。大家の庭をつっきると学校までのショートカットになった。大家の家の団欒と目があうと気まずいのでそのときだけは前を向く。大家の家の玄関を通り過ぎて右へ行くと鶏小屋と農家の倉庫があり、左手の車庫の奥に入れば大家の家の裏口。風呂をわかす器具があり、時間がよければ木を燃やす隣人に合うことができた。鶏のほかにも犬と猫がいて、猫はよく撫でさせてくれたし、犬は散歩に連れ出すこともできた。

南に面した二部屋には縁側があり、天気のいい日はまこと暖かく、寒い夜は寒すぎるので障子をしめてしまう。そうするとないものになって、のんびりと過ごせる。サンルームっていいなぁと思って、あれってけっきょく縁側のことなのかしらんと思ってみれば身近と思えるサンルーム。その縁側は例にもれず本や雑誌が積み上げられていて、墓場みたいだった。奥から漫画をひっぱり出してきてこっそり読んだ。物心ついたころからずっと本が積まれてあり、今思えば本当に全部読んでるんかいと思うような全集も百科事典もあった。床の間に本棚を置くとちょうどいいとかれらは考えている節がある。埃のついた本の奥に漫画が並べられているのを知っていた。

当時はゲームもスマホもPCもなかったし、わがやのテレビの導入は遅かった。余暇、読書の一人勝ちだったんだろうなと考える。なんであんなに本があったんだろう。字が好きだったのかな。本を一冊読んでる間に三冊増えてしまうみたいな生活をしていて、まあそれは血というか環境というか。