紙とくまの生活。
忘れるために書く日記。


魔女、旅に出る

職場が引っ越す。もうじきだ。この件にかんしてはあーだこーだがちょっと前からあって、うまく書けなくて(もちろん会社の秘密めいたこともあって書いたらいけないこともあるのだけど)、そのままになっていた。

職場はなんだかな中小企業といったところで、大きくはない分、身軽でうねうねと動く。会社が動くわけないと思われるかもしれないけれど、そんなことはない。うまれたばかりの会社は成長するし、人々のあれやこれやで脈動し、喜びや恐怖をあたえ、ときには信じられない姿をみせる。そのダイナミズム。さすがは法「人格」、とたまに思う。

つとめてる会社はおそらくよく動く方で、それもアクロバティックな感じなんじゃないかと思う。その動きを面白いと思える人とこんな落ち着きのないところは嫌だと感じる人とさまざまいて、それが会社との「相性」なんだろう。

それで、現在通勤は自転車で行けるのが遠くなってもう通えません辞めましょうとごねたのがバス一本で着くということがばれてあなたが一番楽じゃないかと言われたのが先日。嫌々言ってはいるものの、それはもう決定事項のようで、そしたらもう新しい事務所のことを考えて、うきうきする気持ちと憂鬱な気持ちを半分ずつで、退勤後の雨の中、図書館に寄って、「ああもうこんなに気軽に来れないのだ」と思ってがっかりして。

職場の近くにある図書館は市で一番大きくて「中央」の名を冠している。ちょっと前に建て替えた広くて綺麗な施設もあるのだけど、どうもそちらよりも蔵書が豊かでやっぱり「中央」な図書館らしく、離れてしまうのは名残惜しく、まあでもちょっと回り道をすればいつでも来られる距離なのだけど。

希望する蔵書を検索して、案の定わたしが読みたい本なぞはたいてい閉架に入っていてカウンターで頼むのと、もう一冊は3階にありますよと言われて、ホウこの建物に3階があるとは、という風情で初めて足を踏み入れた3階は。全集やら事典やら資料の宝庫であって、人も少なく机も使え、静かで申し分なく素晴らしい空間。ああでももうこんなに簡単に会えないのねわたし達と気の早い惜別の念。一目あったその日から恋の花咲き2秒で枯れる。げにこの世は。げにげに。