ベランダーの春
ニカンドラを植えた。ニカンドラといったってなんのことか怪しい。わたしの脳内ではマンドラゴラと混同されている(全然似てない)。ニカラグアとも似てる。植物。お花。「クロホオズキ」と言われてもらったのは昨年の夏。渡されるに至るまでにまあまあのドラマがあるのだが、どう考えても冗長なので割愛する(こういった内輪ネタを起源とする冗長さの物語というものもこの世にはあるなぁ。個人的にははけっこう好きだ)。それで、クロホオズキがニカンドラなのだった。
(これはホオズキ)
クロホオズキといったって、ホオズキとは関係ないというのだから腰が砕ける。見た目が似ているゆえの俗称とのことだけど、赤くはないが確かにそっくり。外側の薄い覆いをあけると、丸いパーツが入っており、さらにその中から小さな小さな種がたくさんあらわれる。白ゴマよりも小さく、これはケシだね。あんぱんの上についてるやつね。というようなところまでホオズキと同じ。らしい。
そのケシたちを土の上にぱらぱら播いて発芽を待つ。のだけど、もうなんだか種の多さに圧倒されてしまう。ピンポン玉よりも小さな丸から百も二百も生命の素が出てきてしまって、かといって、そのすべてを育てることはできないなぜならわたしはベランダー。しかし、たとえ広大な庭を持っていたとしたって、すべてを生かそうとするのは優しさに見せかけた怠惰だと思うわ。そしてどれがいい種なのかわたしにわかるはずもなく、「運命は種自身が持っている」と言いきかせながら、できるだけ多くを土の上に広げたのだった。芽が出たらいくらかをプランターに移し替えます。そのときわたしは今日先送りにしたジャッジメントをしなければならない。隣ではすくすくとパクチーが育っている。
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ニカンドラはハエが嫌う匂いを出すらしく、ハエよけになるそうです。
って話をしたら。
ゴリラがベランダに来る可能性を検討させられました(望むところだ!)。