紙とくまの生活。
忘れるために書く日記。


季節の変化

雨が降りはじめたのに洗濯はじめちゃって、干したら部屋の中も雨みたいになっちゃって、垂れさがっている布が湿地帯の樹々を思わせたりする。洗剤には「森の香り」があった方がいいよね。森の香りとはなにか、この際置いておいて。いろんな森があるけれど、毛の長いサルや赤い羽をもつオウムなんかがいる森をわたしは想像しているよ。足元にはオニギリくらいの太さのヘビ! ガサリという音で周囲を見回す危険な森だ。それでも干し終わったわたしはちゃっかり床に入って目をつぶっているから優雅なもの。やまない雨の音がここだけ切り取っちゃったみたいに響いてきて、ときに増幅され歪曲され別の脅威にきこえる。窓が水滴を飲む音、内も外も湿度は変わらず、へだてる何枚かの壁だけが双方を知っている。こちらは明るく外は暗い。家の中は森だ、外は外だ。忍び入ってくる寒さもまた驚異の一だ。夏を疎んでいたのに、いざ秋がやってこようとするとその冷たい手に震える。窓の隙間から皮膚の隙間から入ってきてしんとさせてしまう。季節は好きだけど季節の変化は慣れない。でも季節の変化も好きだ。そこには詩があるように思う。