紙とくまの生活。
忘れるために書く日記。


持たない男

そういえば知り合いにものを持っていない人がいて、ミニマリストというわけではなくて、とにかく生活が下手なひとという印象。久しぶりに会ったら、腰が痛いと言っており、それは寝袋で寝ているからだとピンときた。おそらく五年は一人暮らしをしているはずだけど、寝袋生活をつらぬき続けていた。夏場は一枚。冬場は二枚とのこと。お金がないわけではないのだけど(あるというわけでもないが)、生活必需品を買うのを躊躇い、熟考しているうちに春夏秋冬が過ぎ去ってしまう人なのであった。

寝具を買いなよというだけではまた何年も経ってしまいそうなのでニトリに連行して敷蒲団とカバーと毛布を選ばせた。引っ越しのときも希望を訊かれてそれに合った不動産情報をネットで探されて印刷されて渡されていた。ほかの人が引っ越しするときに家具や冷蔵庫や電子レンジをもらっていた。なにも持たないからよろこんでもらった(冷蔵庫は身に余るといって数か月電源を入れていなかったのでビールを差し入れした)。祖母の遺品から食器と調理道具をあげた。包丁とまな板を持っていなかったのだ。年一くらいで安い土鍋をあげてたいへん喜ばれる(毎日つかっていると割れてしまうらしいので毎年)。

どれもかれが自分で買えばいい話なのだけど、決断が遅いので他人がくれるタイミングの方が早い。蒲団を選びながら、洗える蒲団をみて「洗濯機も買えばいいんだよな!」と言っていたけれど、だれかが引っ越して洗濯機をもらうタイミングの方が早いのではないかと思っている。1Kの部屋には洗濯機設置場所が一応あるのだけど、洗濯機がないからそこには収納ケースが積み重ねられている。

多く持ちすぎたわたし達の荷物がなにも持たないかれの部屋を埋めていくのってエゴでグロテスクだよなぁと思いながら。生活必需品といわれているものがあって、それは世間が決めてる部分もあるのでその中で自分でえらんで持たないものがあってもよくて、しかし真顔で「蒲団って便利」とかいわれるとなんともいえない感じになるよねぇ。