紙とくまの生活。
忘れるために書く日記。


飛行機に乗るたびにメメントモリ

何をしてもしていなくても予定の日はやってきてしまうものだから、日暮らし。飛行機の座席についてそして我にかえる。なんてところに来てしまったのか。これって人生の中でかなり死に近い状況で、さらに避けようと思えば避けられた事態なのにわたしはなんだって好きこのんでレジャーで飛行機に乗る人生を選びとってしまったのかとかそういうの。しかも天気は怪しい怪しい怪しい! 今さら降りるわけにはいかなくて、せめて周りの人も全員そう思ってますように! とだけは強く祈る。離陸までの走行がやたらと長く、そういうのもよくない想像に加担する。あと何回曲がったら地獄の釜の前なのか、十三階段が千十三階段になったのかもみたいなことを考えながらそのうちに飛行機がこの愛すべき機体が鉄の塊がグッとググッとグググッと本気出しますねみたいな音を出して嗚呼もういよいよなんかもうせめてヒナ氏といっしょだからそれはよかったとかそういうことを考えながら迫り来るGに身体をとられているうちにふっとそのGが空中に投げられてしまったみたいに平常になる。手元の時計で高度をみるとマイナス30を示していて笑ってしまう。来たぜ、地獄の一丁目。気圧に騙されている。

雲の上はいつも晴れというのを思い出し、晴天には心を明るくさせられる。本当に単純な頭である。下に見えるのは地上でないから海であろうか。そういえば先日友人から連絡があって、出産をしたという。名前をきけば、ワア知人の子どもズでりく・うみ・そら揃ってしまったぜという個人的なビンゴ。さてクイズ。この中に男の子は何人いるでしょう。全員に話しかけるような気持ちで空の旅をすごすのであった。

あいにくの天気もあり、暗い雲の中は乱気流、フワリと浮き、フワリと沈む。エアポケットに入るとかそういうやつなのだけど、Gがかかるのとはまた違う、あの自分がこの世にいない感は何なのだろう。パイロットの運転がうまいとか下手とかそういうことも考えてしまうけど、イメージの操縦室では機長が必死に舵をつかんで、強風とたたかっている……、でもきっと最新で最高のテクノロジーの鉄の塊は舵と外の気候の連動なんてしていなくて、機械制御とかなのかもしれないし、そしたらそれはもう運転者の技量とか関係なく、自然と文明の対決だよとかそんなことを思い直したのだった。隣ではヒナ氏が目をつむって下を向いている。繊細な人よなとか思いつつ。