林彡
昔に読んだ小説の話をする。少女小説というジャンル、今はもうあまり流行らないのだろうか。めっきり見なくなってしまった。ライトノベルと混ざってしまったのかもしれない。ともかく、ピンクの背表紙のその文庫のシリーズは小学校高学年から中学生の時分には、読書が好きな女子の間ではまあまあ認知され、まあまあ人気があった。内容は男子には教えられない、密やかな甘酸っぱい感じだ。あのぼんやりとした主張しないピンク色は、知ってる者にとってはまあまあのアピールをし、しかしこっそりと女子たちの休み時間を包んでいたのだ。
それで、作者もタイトルも忘れてしまったのだけど、主人公はカリンとかそういう名前の女の子で、いたって平凡と言いながらの中流階級の家の娘で、優しい専業主婦の母親と厳格な父親(医者だか有名企業の部長だったりする)のもとで不自由なく育っているのだが(こんな無邪気な設定の小説、今では読めない気がする(……))、ひょんなことからアキラとかいう名前の不良っぽい男の子と出会い、今まで知らなかった世界に衝撃を受け、そして男らしいアキラにどんどん惹かれていく、、、みたいな話である。もうこれだけでどんな話かわかってしまうのだけど(皆様が想像した通りの筋です)、それで、そんなありきたりな話をなぜ憶えているかといえば、ひとつとんでもないシーンがあったのである。
ふたりは一度はうまくいきかけ、しかし親の反対により引き裂かれてしまう。住む世界が違うのだ。それでもお互いのことを忘れられず、ある晩に少女の家から抜け出しバイクで逃避行、朝方の海を見ながら語り合う。
花林(カリン)と名前を砂に書き、【林】の隣に線をひく。その線を消してまた線を書く。
「カリンはね、アキラ(彬)がいないと、淋しくなっちゃうんだよ」
もうなんだかよくわからない。だからふたりは一緒にいなくちゃいけない(らしい)。急に言葉遊びがきた。完全にこのための主役ふたりの名前。あとだじゃれ!(?) でもここが多分この小説のベストシーン。のはず。おそらくふたりはこのあとうまくいったんだったと思う。よく覚えていないけど。この漢字遊びだけが鮮明で、わたしはこれをトンデモ小説と記憶した(詳細知っている方いれば教えてほしいデスネ)。
これを思いついたがゆえにこの話を書いたんじゃないかと思うくらいの力技に、そんな小説が存在したということに、いやしかし牧歌的な時代であったのだ。それともわたしが知らないだけで、現在もそんな有象無象ばかりなのか。
というような。本当に詮無い記憶を掘り返して。どうしようもない今日の記録とする。
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ヒナ氏もだじゃれが好きで、隙さえあれば言っている(あ、これもだじゃれ)。
先日、むかーしのゲームで「突風ぶり太夫さん」というトップブリーダーの人が出てくるやつの話をしたらハッとして、
だじゃれの所有権を主張。酔ってなくても言うからなー。
(写植ががたがたで笑う(わざとだよ))