紙とくまの生活。
忘れるために書く日記。


シェフ - あと二週間

   

 

ここまでのあらすじ(くわしくはあと三週間を参照のこと) 

数年間つきあった恋人が、どうやら他の女性に心変わりをしているらしい。あれっ、会う約束をしているよ? 嫌だけどどうにもできない。無い頭をふりしぼって考えて、とりあえず、その日はちゃんと帰ってきたら許すことにしたよ! 帰りやすいようにメールもしてみたよ! さーあ、どうなるどうなるー??!?!?!

 

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photo by suvodeb

 

けっきょく。メールは返ってこなかった。時計をにらんでいる間に終電の時間は過ぎてしまった。まだだ、タクシーって手があr 時間は遅く、しかし着実に過ぎた。

ここではじめて友達に電話して今の状況を話した。わたしの決めた賭けのことも。友人はシェフのことを知っていて、会ったこともあったから絶句していた。でもなんか、信じたいなら信じなよみたいな路線のことを言われた。はず。

床に入ったが、眠りは浅かった。ずいぶん早い朝に起きて、のろのろと支度をした。頭も胸もお腹もなにもかも重かった。食欲はなかったし、眠れる気もしなかった。

朝にメールが来ていた。「昨夜は楽しすぎて、夜通し呑んじゃったよ」とかなんとか(そういえば、飲酒のときは「呑」の字を好んで使う人だったな)。用事があるから早めに事務所に行くとかなんとか。

することがなかったから、わたしも出勤した。コンビニでスティック状のパンを買った。チョコチップ入りのが五本くらいはいってるやつ。行く途中で、友人にメールをした。返事は期待できなかったけど、心臓がどきどきしていた。早かったので、シェフは驚いていた。どんな気持ちだったか、あんまり覚えていない。無とか投げやりとかそんな感じだったと思う。せっかく買ったパンだったけど、一本食べるのがやっとだった。

彼はその日のいろんな準備をしてたけど、なんだか隙があって、わたしはまた携帯電話をみることに成功した。携帯をのぞいたことを思い出すたびに愚かすぎて笑ってしまうのだけど、わたしにはそれしかなかったのだ。

ご丁寧にも、向こう様にお礼のメールを送っていて、それによると。話がはずんで超楽しかったよ、みたいな。あのままずっと抱きしめていたかった、みたいな。そんな感じだったと思う。数年後のわたしが戸惑うような文章をメールしないでほしいと思う。抱きしめるとかキスするとか恥ずかしくてわたしタイプできんもん。やめてくれー(別の意味で)。そうそう、シェフはそういうJ-POPの歌詞みたいなのをさらっと口にしたりできてしまう人でした。わたしはできない人でした(二度目)。

たしか。いちおう彼女(わたしのことだ)がいるから遠慮したけどーみたいなそんな感じ。だったと思う。なんだよ遠慮って! 人の存在を自分たちの恋愛のスパイスにしないでほしい!!! って2014年のわたしなら言えるのだけど。

ともかく。帰ってこなかったけど、何もなかった(いや、抱き合ったなら、あったのでは?)ってことで、わたしの賭けは勝ちでも負けでもない、ということになったのだった。なんだそれ! もやもやする!

もやもやするし、メールから読み取れなかった(読み取らなかった)だけで、一線越えてる可能性あるなぁと、今思いました。黒って思ったら死んでしまうくらいショックだったろうから、それでいいのだけど。ともかく、グレーということになったので、なにも変わらず、わたしの食欲と睡眠だけを奪って状況は続くのでした。

 

わたしが友人とかに相談できなかった理由に、携帯をみてたっていう負い目があるのもある。なんで浮気を知ったのか? 言えなーい。

当時のことはすっかり覚えているつもりだったけど、はっきりしているのは感情だけ、でそれも断片的。当時の手帳とか日記とか引っ張り出して見てるけど、そうだったっけということばっかりだった。記憶は何度でも構成されるな、とか。忘れたいことは抑圧されてしまうんだな、とか。曖昧さと恥ずかしさが相まって、現在の自分じゃないと書けなかったりね。手帳によると仕事もびっしり入っていて、プライベートはこんなだし、ふわふわ夢の中みたいに生きてたんだと思う。

あと二週間。でも、終わった後の方がひどかったりしてね。