紙とくまの生活。
忘れるために書く日記。


飛行機あるいはけだものの

いちおう、というか全然まだ生きれていて帰りの飛行機があった。旅の前後が危険な乗り物ではさまれている。おかげさまでスリなどに遭うこともなく、べつにみんな銃持ち歩いてるわけじゃないんだなとか(当たり前だが)偏見がすごい。

スリいなかったねー、などと言うが、スリは(その他犯罪も)遭遇した時点で存在が1であり、遭わないかぎりは永遠に0だからなんていうんでしょう、シュレディンガー的というか、存在の揺らぎがあった。スリがいたことを知ったときにはスリにあっているのだった。

朝にこちらを発ち、明日の朝にゆくのだ。乗り継ぎがあるから厳密には昼前に出て12時間乗ったのち、明日の朝の日本だ。またそこから時間をかけて帰るわけだけど。

飛行機の席自体は高速バスのようなかんじがあるけれど、エンジンが動き出すと機体がぷるぷると震え、生き物に乗っているような気がしてくる。お腹の中を借りているようだ。走りはじめるために動力が強くなり地響きのような音と揺れだ。大きな獣と一緒に広野を走っている。走って走って走って、クッと胸部から浮き上がる。飛んでいる姿は静かに真っ直ぐに見えるけれど、わたしたちの獣は震え、うねり、鼓動を持っている。