音楽
雨が降った。
風が吹いた。
実体をともなった音楽がざんとやってきて、わたしたちを擲った。また、とおりぬけて、同時にすべては細胞に浸みこんだ。おびやかされているのに安らかだった。安心な時間は一瞬と永遠を伸び縮みしてふるえていた。戻ることはできない、過去になってしまったその瞬間を次の瞬間の音楽がさらに含んでまたぶつかってくる。繰り返し。
小さな音がどこかで聴こえてくる。ささやかにうねり、誰かが参加し、だれかが休み、しかしいつか大きな演奏になる。めいめいが音を出して、でも少しも嫌な感じがしない。一音ごとに場所がひらけていく。無限のピクニックシートの上で跳んだり跳ねたり踊ったりしているのをみていた。役割はあるといえばあるが、遂行しなくても大丈夫だった、言われたとおりのことをやらなくても役目は果たせている。その場所にいて、流れにのるようでのらないようにいて、いざ参加してみればそれは調和の一部になっているのだった。人間であり時間であり歴史だった。
不純物のまざりまくった純粋。張りつめた糸のようなするどさはないのに、それと同じかもっと大きなものを指し示していた。指をささないでそれをやってみる。ぜんぶ表裏一体なのだった。
永遠も時計をみれば三時間あまりで、あの感覚はなんだったんだろう。熱中を共通の時間ではかられてしまう感じ。時間とかお金の客観性は暴力的ですらあると思う。それでもやはりたまには冒険するために、願わくはあの音楽がいつでも聴こえてくるように生きていたいと願う。