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紙とくまの生活。
忘れるために書く日記。


白い午後

正午すぎの電車は白いひざしをうけとめて車内はあたたかく三十分も乗るうちに乗客は風船みたいにふくらまされている。それは希望とか将来の展望というような根拠のない自信によってだが、穏やかで明るい日光はそれだけの説得力をわたしたちにあたえる。ぬくぬくの気持ちで遠い街に降り立ち、すれ違うのは昼休憩のサラリーマン&ウーマンたちで、黒い服を着た人が大勢。スタンドで買ったらしいお弁当を外のベンチで食べている女性をながめる。上りエスカレーターは彼女の横顔から登頂のつむじまでを案内する。左利きの人間を見つけて眺めてしまう。えらばれた人、という感じが少しする。

 

自分と似たような人が集まる講座に行く。歳上の人も多くてほっとする。様子をうかがいながら会話をして、ああ人に気を遣うのはこんな感じだと確認する。特定の人としかやりとりをしていないと他人との距離のとり方が行方不明になり、いつもハジメマシテの気分でやる羽目になる。それが本来といえばそうなのだけど。安定と不安定の間を行く。

多くの人間が存在し、しかし自分がかかわるのはそのごく一部であること、知らなかった人間が知っている人間に変わること、知っている(はずの)人間が会話をしているうちにその他大勢に戻る瞬間があること、そのとき孤独を感じるわけではないけれど、ああやっぱりね、という気持ちがやってくる。自分にとってたいせつな他者の数はけっきょく多くはない。