紙とくまの生活。
忘れるために書く日記。


ニセ科学様

人生の三分の一は寝て過ごすのだよという多くの人にとっての事実をあたかも発見したかのようにささやく、この裏返しのようなやり方に毎度閉口していたのだけれど、しかし事実は事実で、われわれもついに到達してしまった寝具道の入り口に長く険しい道のりのはじまりに立つ。人生の三分の一。くだんの呪文をとなえながら。

過程は省くけれども(そのうち書いたっていいのだけど)、検討の結果ある寝具があらわれて現在は試用をしているところ。試させていただいているところ。お試し中のその寝具、詳細は伏せるがニセ科学的物質を練りこんでいて素晴らしい眠りをお届けしますと大々的に謳っておって、しかしなんだかいろいろの迫力におされて試用の次第。効果は上々(なのかプラセボなのか)で、ニセ科学ニセ科学様とわれわれは寝具を奉っておる(がその上に寝ておる)。

ニセ科学だよなと思いながら、でも効果があるのかもしれないと思いながら、商品に対峙してるの、科学的態度とはとうてい言えない。まあ面白がってやっている節はあるけれど。しかし今回思ったのはニセ科学発信側は悪意のない場合も多いのではということで、よーし騙してやるぞといった心持ちはそもそも詐欺だし本当に裁かれてくれと思うのだけど、どうやらいいらしいぞという無邪気な気持ちから発信される人々の声、ならぶお客様の感想の声を読みながら、主観とはいえこれだけ量が集まると、やっぱり効果はあるのかもしれないと思ってしまう。ひとつひとつは小石でも。しかしよく考えたら主観ってエビデンスになり得なかった。ニセ科学が科学になれないのはこのラインを手放さない(手放せない、ほかの方法を知らない)からではないかと思ったり。

手書きのお客様の声と、インターネットのレビューもしくはアフィリエイトしてるんだかの寝具比較サイト、方法は違えど同じような地平に立っているのではとかも思った。

それで、現在お試し中のニセ科学様に今のところ不満はないのだけど、本使用はどうしたらよいだろうか。こういうときにニセ科学の主観たちに靡いてしまう心持ちが自分の中にあるなということがわかった。それだけでも。