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紙とくまの生活。
忘れるために書く日記。


ヘブンのちヘブン

ちょっと引きこもる気分にて。つかれておる。

ひきつづき、川上未映子を読んでいて、今はこれ。

魔法飛行 (中公文庫)

魔法飛行 (中公文庫)

 

 

なんだか読んでるうちに、くらくらしてきて本をとじた。川上未映子の成分をいちどにたくさんとりすぎて、中毒みたいになっているような感じがした。むかしもそんな体験をしたことがあって、ある作家を好きになってとりつかれたように貪るように耽読、数か月間ずっとずっとその作家の言語や世界にひたっていたのがある日突然、冷めたのだ。同時にその期間のことが急に恥ずかしくなって、買い集めた本は全部処分してしまった。その作家のことは今も一年に一度くらい思い出して、ネットで検索して、ああこんなことしてるのねとフンフンしらべるくらい。なんなのか。別れた恋人をfacebookでしらべる気分なのか。もうでもけして、手に取ることはないとわかっている。そして、川上未映子のことはすきだから、めちゃくちゃすきだから、ちょっと間をおくか、一日の摂取量を少なめからやっていこうと思ったり。

しかしこの話には続きがあって、目の前の作家にいつか飽きる恐怖におびえながら読みながら、このエッセイ自体からただようぼんやりとした時間にふと気づく。時間の感覚がない、というか独特でぼわーっとしている、ひとつひとつは新しく鋭いのだけど、現実との一致がむずかしい。これがこの人の時間なのだろうナァ。

たとえばこんなところ。

最近は外食がつづき、つづく、そんな日々であって、連載もつづき、つづく、そんな毎日なのであって、真新しいことは何も起きない起こさない、そんな春の日々なのでありました。

『魔法飛行』(p33) 中公文庫

読んでいるだけではなにも起伏もなく、なんだか春らしいけど変わらぬ日常、なにも起こらないという時間の中で。

たとえばここ。

……人類の挨拶みたいになってるけど、ほんとうにまあ時間のたつのははやいもので、人間における、この「時間のたつのははやいもので」という感慨をすべて集めるとどれくらいの大きさ&エネルギーになるんだろうとか思うほどにすべての人が絶えず思っていることなのだろうけれど何もかもが本当なので仕方がないよね。

前掲書(p34)

 前半部分で助走をつけてるのに、そのまま巻き戻ってくる。叛逆はしないで、すっと着地。ここは偶然に時間のことをよく書いてくれてあるので、自分と重ねて気づけたのだけど、うろうろと同じところを歩いている文章を読んでいるのだから、こちらも時間が動いた感じがしないで眩暈がしてくるんじゃないかな。など。そういうことを書いているのはこの人だけでないにしても。

いやしかし、その文章の妙味みたいなからくりみたいなところが見えてしまうと、わかったような気になって飽きて白けてしまいますね。いまここに書くことで自分でそれを強化してしまっていますね。やば。とか考えながら、この文章に向き合う方法をもうひとつ見つけたぞ、とうれしいような気持ちにもなっておるのです。以上です。