紙とくまの生活。
忘れるために書く日記。


シェフ - それから

   

別れた日は、とてもいい天気だった。シェフの家に置いてあった荷物を全部まとめて、自転車をふらふらさせながら家に帰った。一眠りしてから起きた。現実感はやっぱりなかった。掃除と洗濯をした。ちらかった部屋をかたづけて、ちゃんと暮らそうと思った。

本当は。前みたいに戻るとどこかで思っていた。あんなに愛してるといった人が自分を裏切るとは信じられなかった。まだまだ。全然すがっていた。夜眠れないのは続いていた。部屋を暗くするといろんなことがよみがえってくる。ルールズとか恋愛の相談のブログとか復縁についての書籍とかを読み漁った。プールに行ったり、さぼっていたメイクをちゃんとするようにしたりとか。女性として、だいぶ手を抜いていたことを猛省したりした。日記には、どうしたら戻れるかみたいなことを書き散らしていたりした。すごい執着だ。別れ際に「賢い」って言われたのも関係あったのかもしれない。冷静に頭を使って、戻ろう、みたいな。たぶん。

 

三日後くらいにまた呼び出されて、お姉さんの家に行った。別れたことはすでに耳に入っているみたいだった。お姉さんが言うには。「料理よ」。ぜんぜん意味がわからないけど、別れの理由としてシェフはわたしが家事をやらないみたいなことを言ったらしい。らしいんですよ! まじで意味わからんわ!! 確かにシェフの家に泊まっても、食事は外食が多かった。いやでも、つくらないことなかったと思うけど。家事ったって、部屋をちらかすシェフの後を追って、脱いだ服を集めるみたいな生活は嫌だった。せめて、脱いだ服は洗濯機に入れてくれと言ったけど、それがいけなかったんだろうか。話がそれた。 

T-fal レジスタル スピリット フライパン 24cm D23304

T-fal レジスタル スピリット フライパン 24cm D23304

 

「胃袋をつかめ☆」みたいな完全にそぐわないアドヴァイスとともに、フライパンをもらった。T-falのやつ。 まあでもそんなものかと思って。なんか料理をつくるブログでもやろうかなとか思っていた。努力の方向性よ。

一方そのころシェフは。つって。別れた日。あの天気のいい日の午後から、向こう様の家に入り浸っていたという。あと、会社の主な人集めて飲み会を開催して、わたしと別れたという報告してた! もちろん向こう様のことは伏せて。どんな顔して言ったんだろう。悲劇のヒロ男ぶったのだろう。わたしが必死に平気な顔している裏で。ひどいと思った。腹立つ。まあでも、乗り換えたことはすぐにばれてたから、後処理下手男か。って思った。なんかぐだぐだすぎて、馬鹿馬鹿しくもなる。

 

そんで。さらに。一か月後くらいにまたお姉さんから呼び出された。のだよ。この話全然終わらないのな。それは、シェフがお姉さん家に向こう様を連れてきて紹介したので、「ははーん、事の次第は承知したよ」っていう話。弟のことは置いといて、ぅちらゎ友達でぃょぅネ☆なんつって、ズッ友宣言されて、ありがてぇ庄屋さんありがてぇと村人みたいになったけど、距離はおくよね。結局、お姉さんは弟のことは捨てられないからね。わたしからは連絡しないよね。まあでもまだたまに会ったりするので世の中って怖い。

シェフと向こう様は数か月後にでき婚……授かり婚されましたー!! イェーイ! おめでとー!! あとちょっと前に第二子が生まれたそうですー! イェーイ! おめでとー!!!

わたしは。強がりかもしれないけど、文字にできるくらいまでには元気になりました。今まで会った中で一番気の合うおもしろ人間と暮らしています。あの時。やけくそのような感じで、30歳になるまでに結婚するって、結婚に対して変な目標ができたけど。なんだかんだ、神様と同居がはじまって一年が経ってしまった。もうこれは内縁関係ということなので、目標は達成したのかもしれない。みたいな。甘。

 

わたしとシェフの話はこれくらいでおしまい。おしまいだ。